剣道の強さを決定づけるのは竹刀そのものではありません。しかし、日々の積み重ねである鍛錬を効果的にし、パフォーマンスを最大限に発揮するためには、自分に合った竹刀を選ぶことが大切です。自分に合った竹刀とは具体的にどんな基準で選ぶものなのでしょうか?
竹刀のサイズを決める要素
中学生以上であれば、竹刀の長さと重さは個人の好みで選べるものではないのはご存知かと思います。公式戦の規定が絡んでくるためです。(ただし大学生または一般の女性の場合、腕力や背丈によっては規定より下のサイズを選択するケースも見られます)
一方、小学生以下の児童は身長に合わせた選択幅があります。こちらに関しては剣道を指導する先生に相談するのが得策でしょう。その上で、お子さん自身に実際に持たせ、確認してみるのも悪いことではありません。
ちなみに竹刀の長さはcmではなく○尺○寸で表記されており、二尺八寸ならにっぱち、三尺七寸ならさぶななと独特の通称で呼び示されています。
一尺は30.303cm、一寸は3.0303cmですが、換算して現行の「剣道試合・審判細則」上における竹刀の長さと照らし合わせてみると若干の誤差があります。尺寸法の表記は慣用的な通称として捉えておきましょう。
公式戦の竹刀規定について
全日本剣道連盟の規定では、以下の通り定められています。(2019年現在)
- 中学生:37(さぶなな)=114cm以下、男子440g以上、女子400g以上
- 高校生:38(さぶはち)=117cm以下、男子480g以上、女子420g以上
- 大学生&一般:39(さぶく)=120cm以下、男子510g以上、女子440g以上
規格を満たしている竹刀にはもれなく『SSPマーク』の入ったシールが付与されています。全日本剣道連盟の試合基準に合格した竹刀であるという証明のため、購入の際は確認しておく癖をつけておくと良いでしょう。
また、37以上の竹刀にはそれぞれ男子用と女性用が製造されています。購入時は間違えることのないようにしてください。
「体格に合ったもの」とは?
先述した通り、大学生以上の女性の場合は取り回しやすさを考慮して39(三尺九寸)ではなくあえてその下の38(三尺八寸)を使う方もいます。長さの下限に対する規定はないため、重ささえクリアすれば問題ありません。
また女性に限った話ではなく、お年を召してから趣味で剣道を始めた方、不慣れなため段階的に重さに慣れていきたい方なども同様です。
自分の身体に負担をかけるような竹刀を使っていては、剣道の腕を磨くどころか楽しむことさえ難しくなってきます。同じ重量でも他の型より軽く感じる胴張型や、柄が細く握りやすい柄細型を選択するのも得策でしょう。
竹刀の形状とその特徴を知ろう
竹刀の形状(型)は一種類ではなく、重心の位置によって分類されています。重心の違いは竹刀を持ったときや振ったときの感覚に現れます。
重心が手元に来るほど竹刀の振りが速くなり、反対に重心が剣先に行くほど打ちに重さが加わるため、自分のスタイルに合ったものを選ぶことでより自分の個性と技術を研ぎ澄ませることができるでしょう。
【普及型】重心:中心辺り
普及型と名がつく通り、もっとも一般的に使用されている型です。癖がなくバランスの良い作りは初心者から熟練者まで使用者を問いません。製造や流通の量も特に多いため購入が容易かつ安価、耐久性も高いことから、稽古用としても個人のスタイルを問わず使われています。
【胴張型】重心:手元に近い位置
胴張りとは柄から一番近い部分の節(第三節)のことを指します。この部分を特に張って重心を手元に寄せたものを胴張型といい、重心、ひいては竹刀自体の重量を手元に配することで竹刀の重みや振りを軽く感じさせます。技の速度や俊敏さを持ち味とする剣士に特に愛用されている型です。
【実践型】重心:手元
胴張型の剣先を削ることによって軽くし、さらに手元に重心が来るように設計された竹刀です。
他のどの型よりも俊敏に竹刀を振ることができますが、先が細いということは衝撃に弱く耐久性が低いということでもあり、練習用には向きません。練習には普及型、試合には実践型という使い分けをおすすめします。
柄を太くすることでさらに振りを軽くさせる「柄太実践型」もあります。充分に握り込めるほど手の大きい方はぜひ試してみると良いでしょう。
【小判型・柄細型】重心:中心辺り
小判型と柄細型の重心は普及型と変わりません。その特徴は柄にあります。小判型の柄は楕円形をしており、握ったときに縦と横が分かりやすいのが特徴です。正しい握り方が身についていない初心者にはもちろん、握りの矯正を行いたいときにも使われる他、握りやすさの点でも好まれています。
柄細型は柄が細くなっているため、手の小さい方もしっかりと握り込むことができるのが特徴です。人によっては柄細型以外は選択肢にないなんてこともありえます。持ち手が細いことから、重心の関係で普及型よりも振りの感覚が重く感じられるかもしれません。
【古刀型】重心:剣先に近い位置
直刀のように全体的な太さを均一にした古刀型は、普及型などの一般的な竹刀と比べると剣先に重みが感じられます。剣先の重さは打突の重さに繋がるため、主に力強さを求めるベテランに好まれています。
持った感覚も重いので、腕力がなければ使いこなすことは難しいでしょう。玄人好みらしく価格も基本的に高めです。
素材の違いは値段の違い?
竹刀の素材といえば、剣道経験のあるなしを問わず真っ先に思い浮かべるのが竹でしょう。未経験者であればむしろ他にどういった素材が使われるものなのか疑問に思ってしまうかもしれません。
竹にしてもどんな種類の竹を使っているのかについて把握しておくと、今後の竹刀選びに役立つでしょう。
竹刀で使われる素材は2種類
竹刀で使われている素材は、大まかには竹とカーボンの2種に分けられます。竹自体も品種が真竹(まだけ)と桂竹(けいちく)の2種に分かれます。品質や価値の観点で優劣をつけるなら真竹のほうが上で、高級品として扱われています。
真竹は肉質が柔らかく繊維の密度が高いため、コシが強くよくしなります。「割れにくい」「ささくれが発生してもダメージが低く抑えられる」という手入れに関する面でも優秀さがうたわれています。
一方の桂竹は固く柔軟性に劣ります。折れやすくささくれにも弱いため、安価な量産品として、練習用の竹刀に多く使用されています。しかしそのしなりの薄い硬さは打ちの速度に好影響をもたらすとして、試合においても愛用する剣士もいるようです。
真竹も桂竹も多くは中国や台湾など国外のアジア圏で生産された竹ですが、国産の真竹からなる竹刀も製造されています。ただし国産真竹を使用した竹刀はほぼ確実に最高級品と銘打たれており、気軽に手を出せるものではないでしょう。
日本の風土で育った竹は、湿度の高い日本の気候や環境に当然ながら順応しています。そのため劣化しにくく粘りが強く、しなやかでしっとりとした質感に伸びのある確かな打感と、多くの魅力を備えています。一度は体感してみるべき素材であることは間違いありません。
1990年代から普及し始めたカーボン(炭素繊維強化プラスチック)はスポーツ用品の素材として今ではお馴染みですね。竹とは比較にならない耐久性の高さを誇りますが、そのぶん価格も並の竹製とは比較になりません。
手入れが容易な点、当たると竹よりも痛い点、大会によっては使用を制限されている点などメリットとデメリットが竹と大きく異なるため、あらゆる面で初心者が購入するのは避けるべきでしょう。
竹だからこそできる選別&加工
竹刀を選ぶときに『青竹』や『燻竹』という表記を見たことはありませんか?これは別種の竹ではなく、真竹と桂竹のいずれかにあたります。
青竹は石膏竹とも呼ばれ、通常なら煮沸乾燥させるところを日陰での自然乾燥だけで仕上げた竹を指します。単に青竹と表記されるものはおおむね桂竹の青竹であり、真竹の青竹は真竹青竹と表記されます。
茶褐色の見た目で明らかに異なる燻竹は、その名の通り竹を燻した素材です。燻すことで色と香りがつくのはあくまで副次効果で、竹の強度を上げる効果があるのです。桂竹、真竹ともに製造されています。
剣道に必要不可欠なおすすめ練習向き竹刀TOP5&試合向き竹刀TOP5!
これまで竹刀の型と素材についてご紹介してきました。とはいえあくまで分類であり、実際に製造されている竹刀の種類は少なくありません。ここからは具体的にどの竹刀が人気&で「売れ筋なのか、ランキング形式にてご紹介いたします。
練習向き竹刀ランキングTOP5
練習用として用いる竹刀を選ぶときに優先したいのは、耐久性を主としたコストパフォーマンスの良さでしょう。こちらでは耐久性においては格別のカーボン製の竹刀をあえて除外し、高コスパの普及型竹刀をピックアップしました。
第5位:鍛錬型仕組完成竹刀
普段から規格内の竹刀を稽古に使って慣れておくに越したことはありません。鍛錬に打ち込んで折れても気にならないという点も、やはり練習用として魅力的な要素でしょう。10本セットも販売されています。
第4位:桂竹 竹刀/3.8/並/先中吟仕組W [完成品] 黒文字『利他』
第3位:普及型吟風仕組み竹刀【SSPシール貼付】
第2位:新普及型吟風仕組竹刀「唐獅子」
価格の点ではセット購入がおすすめですが、まずは1本購入して試してみるのも良いでしょう。学生専用に仕立てられた竹刀とあるものの、大学生・一般向けの39サイズも製造されています。
第1位:訳無し普及型床仕組竹刀 28~38 幼年~高校
10本以上は送料無料となっているため、ひとまとめに買ってしまうのも良いでしょう。児童から高校生までサイズが取り揃えられており、相性さえ良ければかなりの長期間安定して利用できるのが嬉しいポイントですね。
試合向き竹刀ランキングTOP5
試合用として特に使用者が多いのは実践型や胴張型ですが、使用頻度が高くサイクルの早い練習用とは異なり、どの製品を愛用するかは個人の感覚に大きく左右されるものです。まずはこちらのランキングに挙げたものを一通り試してみることをおすすめします。
第5位:実戦型特製竹刀 『嵯峨』
第4位:特撰胴張実戦型竹刀『源心(げんしん)』
『源心』は剣先の細い実践型ではあるものの、むやみな振りの速さよりは重さと軽さのバランスが特徴として際立っている竹刀です。制御の効く振りやすさを求める方に特におすすめです。
第3位:胴張型特製竹刀 『京極』
第2位:燻製胴張型上選竹刀『風林火山』
『風林火山』は、深い色味がひときわ目を惹く肉厚な燻竹を使用しています。耐久性の高さと振ったときの鋭さが魅力です。燻竹はしっくりとした握りの馴染みが良いため、手の大きさに不安がある方にもおすすめできます。
第1位:特撰胴張細身実戦型竹刀『煌(きらめき)』
『煌』は胴張実践型らしい抜群な使用感の軽さに加え、バランスの良さ、稽古での使用にも耐えうる耐久性の高さが強い人気を誇っています。使いやすい竹刀を求めるならまず最初におすすめしたい逸品です。
剣道家の憧れ!竹刀の最高級品をご紹介
単純に高価という意味であればカーボン製の竹刀に行き当たります。購入するなら普及型を、試合ではなく練習用としての所有がおすすめです。
普段遣いはもちろん、通常使用している竹製の竹刀が折れるなどしてストックがなくなったときに備えておく…というのは、経済的に余裕があるなら非常に有用な使い方でしょう。
竹刀の最高級品を求めるのであれば、何を置いてもまず西野竹刀製作所の『弘光作』が挙げられます。
全国に弟子と多くのファンを抱える竹刀の名工、西野竹刀師が制作する『弘光作』は、真竹の切り出しから製造まですべて手作業で行われるものです。まさに職人の技術の粋であり、その品質は疑いようがありません。
他には愛媛県・神山地域の伊予真竹で造られた『神山武天』、柄の長さと太さをオーダーメイドで発注できる『徹将』などがあります。
いずれも熟練者向けの竹刀ですが、身の詰まった国産真竹の使い心地と耐久性は比肩するものがありません。初心者も中級者もひとつの目標として据えられるのではないでしょうか。
竹刀を保管する竹刀袋おすすめ5選
竹刀を持ち歩くにあたりさすがに剥き身というわけにはいきませんよね。必須の竹刀袋ですが、多くの竹刀と違って消耗品にはなりにくいものです。どうせなら使い勝手が良く耐久性の高いものを選びたいですよね。以下のおすすめセレクトを参考にしてみてください。
第5位:【九桜】剣道 竹刀袋 尚武型 2本入り
第4位:【寶船(ホウセン)】『方石の書』竹刀袋
兵庫県にある剣道・居合道専用入れ物製作処『寶船』が手がける帆布製の最高級竹刀袋です。
思い入れのある一文字から四字熟語まで任意で1~4文字の『書』が入れられるほか、生地と刺繍の色が選べ、名入れも可能となっています。自分のためだけの特別な竹刀袋を求める方には文句なしの一品に仕上がることでしょう。
第3位:ナイロン略式竹刀袋B
37以下向けのため児童~学生向けの製品です。雨に強いナイロン製となっており、名札入れに差し込める黒革の生地の名入れ刺繍も無料で受け付けています。
ダークカラーが主流の竹刀袋において、9種の鮮やかなカラーバリエーションから選べるのも人気のひとつですね。
第2位:【KENPRO】竹刀袋PROⅡ-N(木刀ベルトなし)
合成皮革製のこの竹刀袋はまずその楽器ケースかと見紛う都会的でお洒落な外観が目を惹くことでしょう。
3本の竹刀が収納可能で、ショルダーベルトの他にハンドルも付属し、外側には500mlペットボトルが入るポケットも入る、機能性においても抜群のアイテムです。
同メーカーから出ている別バージョン『竹刀袋SPORTY-N(木刀ベルトなし)』では、白や黄色など明色を含めた5色のカラーバリエーションが楽しめます。他の機能面ではほぼ変わらないため、好みで選べるのが良いですね。
第1位:アラベスク生地剣道竹刀袋 五本入
竹刀選びで大事なこととは?
竹刀を選ぶうえで大事なことはとにかく実際に試してみることです。普及型に限らず多くの種類を稽古で使い倒し、自分の身体やスタイルに向いた型及び銘を自らの手で探し当てましょう。
剣道の上達において向上心が必要なことと同様に、道具探しにおいても向上心は大事な要素です。自分に最適だと思える1本と出会えたら、あなたの腕もさらなる高みを目指せることでしょう。